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過去の誤謬の修正再表示について ~各法制度との関係(その1)~

従来、過去の財務諸表における誤謬が発見された場合には、

前期損益修正項目として当期の損益で修正する方法が示されていました。

しかし、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号、以下遡及基準)が適用開始となったことで、前期損益修正項目としての取り扱いは認められなくなり、前期に遡って修正再表示する実務が新たに登場しました。

 

会計上の変更による修正再表示は、正当な理由に基づいて行われるものであり、

過去の財務諸表に誤りがあったわけではありません。

一方、誤謬による修正再表示の場合、過去の財務諸表に誤りがあった、

すなわち法制度の遵守に問題があったということになります。

そこで、過去の誤謬による修正再表示に関して、各種法制度との関係での様々な疑問をQ&A形式でまとめてみましたので、

実務での参考にしていただければと思います。

 

会計基準の適用

Q1.過去の誤謬があった場合には、必ず修正再表示をしなければならないのでしょうか?

 

金商法関係

Q2.誤謬による修正再表示を行った場合、金商法における訂正報告書を出す必要はあるのでしょうか?
Q3.誤謬による修正再表示があった場合、過去の内部統制評価には影響を与えるのでしょうか?

 

会社法関係

Q4.誤謬による修正再表示を行った場合、会社法の過年度の計算書類の取り扱いはどうなるのでしょうか?

 

税法関係
Q5.法人税の追徴などがあった場合には、修正再表示は必要でしょうか?
Q6.過去の誤謬を発見して修正再表示を行った場合、税務申告書はどのようになるのでしょうか?

 

今回は、遡及基準の全般的な内容(Q1)と金商法との関係(Q2、Q3)について、取り上げていきます。

 

 

会計基準の適用

 

Q1.過去の誤謬があった場合には、必ず修正再表示をしなければならないのでしょうか?

A1. 重要性によります。(重要性の判断は下記参照)

 

過去の誤謬があった場合、修正再表示を行うかどうかは、財務諸表利用者の意思決定への影響に照らした重要性の判断によります。

 

つまり、重要性があれば修正再表示が必要となりますが、重要性がなければ当期の損益計算書で営業損益または営業外損益として一括処理することが認められています(遡及基準第35項、第42項、第65項)。

 

では、修正再表示が必要となる重要性とは、どの程度なのでしょうか?
遡及基準は、重要性の数値には言及していませんが、重要性の判断は財務諸表に及ぼす金額的な面(金額的重要性)と、質的な面(質的重要性)の双方を考慮する必要があると記載されています。

 

そして、「金額的重要性」には、
・損益への影響額又は累積的影響額が重要であるかどうかにより判断する考え方
・損益の趨勢に重大な影響を与えているかどうかにより判断する考え方
・財務諸表項目への影響が重要性であるかどうかにより判断する考え方
があるとされています。

 

また、「質的重要性」には、

・企業の経営環境
・財務諸表項目の性質
・誤謬が生じた原因

などによって判断するとされています。

 

重要性の判断について、遡及基準にはこれ以上の記載はありませんが、「金額的重要性」については、内部統制の評価における開示すべき重要な不備の判断基準である「連結総資産、連結売上高、連結税引前利益などに対する比率、例えば、連結税引前利益については、概ねその5%程度」の指標が一つの参考になると考えられます。

 

また、「質的重要性」については、
・企業の経営環境  →上場廃止基準や財務制限条項への抵触
・財務諸表項目の性質→引当金や繰延税金資産などの見積り項目
・誤謬が生じた原因 →故意によるもの、特に経営者が関与しているもの
等が、一般的に質的な重要性の高いものと考えられます。

 

また、訂正報告書の提出の可否に関する判断基準も参考になるものと考えられます。
これについてはQ2を参考にしてください。

 

会社としては、監査人と相談し、遡及するか否かの判断基準を定め、それにしたがって判断できるようにしておくことが必要と思われます。

 

 

金商法関係

 

Q2.誤謬による修正再表示を行った場合、金商法における訂正報告書を出す必要はあるのでしょうか?

A2.誤謬による修正再表示に先立ち、訂正報告書の提出が必要になると考えられます。

 

過去の誤謬を修正再表示するのは重要性がある場合ですが(Q1参照)、そもそも金商法においては、重要な事項の変更その他公益または投資家保護のため訂正の必要があると認めた場合には、訂正報告書を提出しなければなりません(金融商品取引法第7条)。

 

したがって、金商法においては、通常は過去の誤謬による修正再表示に先立ち、訂正報告書が提出されるものと考えられます(新起草方針に基づく改正版「監査基準委員会報告書第63号『過年度の比較情報―対応数値と比較財務諸表』」の公表について 前書文 及び遡及基準64-65項 参照)。

 

会計基準適用における重要性と、金商法における重要性(訂正報告の要否)は、必ずしも一致するわけではないと考えられますが、実務上の対応としては、過去の誤謬を修正再表示するほどの重要性が認められる場合には、特段の事情がない限り、過去の有価証券報告書について訂正報告書を提出した方がよいものと考えられます。

 

 

Q3. 誤謬による修正再表示を行った場合、過去の内部統制評価に影響を与えるのでしょうか?

A3.誤謬の原因によっては、再評価・訂正報告を行う場合も考えられます。

 

内部統制報告との関係は、修正再表示の原因によって取扱いが異なってくるものと考えられます。内部統制報告制度の対象は、適切な財務報告を行うための体制であり、財務報告そのものではありません。したがって、誤謬による修正再表示が直ちに内部統制報告書の訂正報告に結び付くものではありません。

 

ただし、過去の誤謬の原因が内部統制の評価範囲内のものであり、さらに財務報告に重要な影響を及ぼすような内部統制の不備(開示すべき重要な不備)から生じたものであると判断される場合には、内部統制報告書についても訂正報告書の提出が必要となると考えられます。

 

逆に、過去の誤謬の内容が適切に評価された内部統制の評価範囲外から発生した場合であるか、または評価範囲内であっても開示すべき重要な不備にあたらなければ、内部統制報告書の訂正は不要と考えられます(内部統制報告制度に関するQ&A問71 参考)。

 

次回は、会社法との関係(Q4)と税法との関係(Q5、Q6)について、取り上げていきます。

 

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